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2008.08.14

「うすいいす」ができるまで

 今年のミラノサローネのサテリテに出展し、「Design Report Award」の優秀賞を受賞した橋本潤氏(フーニオデザイン)の「うすいいす(Thin Chair)」が、五反田の東京デザインセンターで展示されていた(12日まで)。

 本展が興味深いのは、2004年から制作を続けてきたうすいいすシリーズの全バージョン(ver.1.0~ver.5.0)を見られるということだった。同氏が一つのテーマに、4年近く取り組んできた成果である。

 ver.1.0では「金属で薄いいすを作る」というコンセプトをそのまま表現し、ver.2.0ではそのコンセプトをより純化させ「1枚の鉄板」ということにこだわり、その代わり初代からは少し離れた。ver.3.0ではもう一度基本に戻った結果、「1枚の鉄板」にはこだわらず、補強を入れた。また強度のカギを握る鉄板の両端につけた溝を見直し、さらに深くした。ver.4.0では白く塗装し、「いったんもめん」のようにヌメっとした感じを表現。溝の深さや背もたれなど、全体的に安定感が生まれた。そして今年ミラノで発表されたver.5.0では、ver.2.0で登場した「1枚の鉄板」から生まれた感じを改めて追求した。背もたれに軽く折り目を入れ、もたれた時のたわみを吸収しやすくした。

 ver.3.0以降の制作に二人三脚で協力したハンドファクトリー(有)(埼玉県川口市)の大村守一社長は、「最初に図面を見た時にプレス成型の形だと思いました。しかしコストや納期の面でプレスは現実的ではないため、なんとか我々の環境や設備範囲の中で完成させることを目指しました。工業的な完成度を要求されるものを工芸的な手法で実現してみた感じですね。職人が二人がかりで手で曲げていきました」と振り返る。

 「橋本氏はよい意味で粘り強い」と大村社長。橋本氏が「こういうものができないか」とver.1.0の図面と試作品を工場に持ち込んできた時、溶接や仕上げの完成度に驚いたそうである。「にもかかわらず自分のデザインを追求して、さらに周りを動かしていく姿勢はデザイナーとしてすごいマインドを持っていると思った。プロセスを通じて、中途半端に満足してはいけないということを改めて勉強させてもらった」とベタ褒めだ。

 レセプションでは橋本氏は奥様と共にバーテンダー役までこなすほどの気配りと自ら動く穏和な人だ。一方で、胸のうちに強い情熱や意志を秘め、じっくりと考えて一歩ずつ確実に取り組む姿勢は確かに周囲を動かす何かがある。「中途半端なところで満足しない人」という大村氏の評価のとおり、4年にわたって追求し続けた一つのコンセプトが見事に形となった。サローネという世界の大舞台で表彰されたことは決して偶然ではない。


「うすいいす ver.1.0」


「うすいいす ver.1.0」を横から見たところ


「うすいいす ver.1.0」。完成からはまだ遠い。この補強はver.4.0を作る時に検討用に追加したもの


「うすいいす ver.2.0」。「一枚の鉄板からいすをつくる」というコンセプトが加わった。溝がなくなっている


「うすいいす ver.3.0」。再び、ver.1.0の基本に立ち返る。溝が生き返った


「うすいいす ver.4.0」。ver.1.0→ver.3.0の系統の進化形


「うすいいす ver.4.0」。安定感がある。ここで終わるかと思いきや……まだ続きがあった


「うすいいす ver.5.0」。サテリテで受賞した作品。ver.2.0で登場した考え方「1枚の鉄板から生まれた」感を改めて追求して、融合


「うすいいす ver.5.0」。最終的にたどりついた完成度

 

 

●今後も同年代のデザイナーや建築家の活躍を積極的に紹介していきたいと思っています。展覧会や作品に関する情報もお待ちしております。
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コメント

うすいいす ver.1.0 を冷やして座ったら頭の中もシャッキ!!、とするに違いない。

この夏も暑く、一瞬のヒヤッと感が欲しいですよね。

未だ未だ暑さが続く様子。
どうぞ、お体に気をつけてご活躍下さいね。

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