東松照明 新宿騒乱
逆境である。
そんな時に東松照明の写真は劇薬のように効く。それらはいわば、60年代のあらゆる逆境が渦巻く中で、もがき、闘う若者達の姿である。
しかし70年代以降、急速な経済発展と共に、彼ら若者も姿を消した。逆境でなくなると、まず闘志がなくなる。異議申し立てがなくなる。そして新しい創造がなくなる。一体、彼ら若者はどこに行ったのか。その姿を追い求めて、日が暮れて。ふと立ち止まって見つめた路上、西日を受けて長く伸びた己の影の中にかの若者の残像を見る。
逆境でなければ見えない景色や人の心というものがある。この時期から何を学ぶか、どのような心持ちで対処するかによってその後が全く変わってくる。そして今、心にひとつの灯がともる。その灯は私をアジる。自分に負けるな、もっと闘え。己に巣くう見えない敵にパンチを繰り出せ。もっと息を切らして走れ。走り抜け。 それが本当の人生だ。
さて、本題は以下です。
東松照明 新宿騒乱
MISA SHIN GALLERY
2011年4月21日(木)-6月11日(土)
■60年代、騒乱と混沌の現場を切りとった男『東松照明 新宿騒乱』
写真家東松照明は30年名古屋生まれ。
米軍基地や長崎、沖縄などをテーマに、戦後日本の急速な発展の裏側にある陰影を鋭く切りとってきた。
本展は64年から71年までのヴィンテージ写真を中心とした20点で構成される。毎晩のように学生のデモ隊が広場を埋め尽くし、あらゆる前衛芸術や思想が堰を切って「世の中を変えてみせる」ともがき暴れた騒乱の時代。その中心が東京・新宿だった。東松が「作品を作ろう」と狙って撮ったものはない。ひたすら暴走する若者たちを追い、現場に入り込んでシャッターを切り続けた。
モノクロでありながら濃密な極彩色を感じさせる写真は、どこか熱に浮かされたような街の狂気や高い湿度感を伝える。特に気になるこの一枚は70年に撮影されたものだ。舞踏家土方巽が樹を担ぎ路上でむせび泣くパフォーマンスは、熱いエネルギーが渦巻いた60年代の終焉を嘆くかのようだ。
今こそ。今だからこそ。

東松照明「街路樹を演じる土方巽」1970 (c)東松照明 Courtesy of MISA SHIN GALLERY
画像はギャラリー提供


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